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我が国における航空身体検査証明制度

わが国の航空身体検査証明制度は、昭和45年(1970年)から現行体制になっているが、当時の身体検査基準は技能証明資格によって三種類に分かれていた。国際民間航空機関(ICAO)のAnnex 1の変更を受け、昭和60年1月(1985年)には航空法施行規則が改正され、現行の二種類の身体検査基準になっている。

航空身体検査を実施する医療機関(指定機関)を定めて所定の検査を行い、そこに所属する医師を指定航空身体検査医(指定医)として指定し、検査結果の評価・判定に携わせて身体検査証明書を交付する仕組みになっている。これが、わが国独自の二重指定制度である。

1.航空身体検査の実態(指定機関、指定医、検査マニュアル、判定等)

国土交通省・航空局は、航空身体検査基準を航空法施行規則に規定している。また、航空局長は航空身体検査証明制度が適正、且つ統一的に運用されるよう航空身体検査マニュアル(以下 検査マニュアル)を定めている。

指定機関と指定医は、国が法律に基づいて執行する本制度の重要性を認識して適正な検査を実施し、検査マニュアルに準拠した判定を行うことを求められている。航空身体検査は所定の検査を指定機関で実施し、そこに所属する指定医が検査結果を検査マニュアルに準拠して評価・判定し、適合すると判断した場合には身体検査証明書を交付する仕組みである。一方、検査マニュアルに準拠した判定の結果、一部分でも適合しない場合には不適合と判定しなければならない。この場合には、申請者は航空身体検査証明審査会(以下審査会、waiver)の判定を申請出来る仕組みになっている。平成26年10月現在、国内の指定機関は98の医療施設、指定医は169名を数えている。

2.航空身体検査証明審査会(waiverの取扱い)

1)審査会の構成

審査会は、昭和45年(1970年)に航空局長の諮問機関として発足している。航空医学の専門家である医師を中心に構成されており内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、精神神経科及び循環器科が各2名、並びに航空従事者及び行政関係者(防衛省)が、その任に当たっている。審査会は毎月の第一火曜日に開催されているが、年間を通じて約1000件に上る申請事例の審査・判定をしている。

2)審査会判定後の指示等

審査会の判定において適合するとみなされた者が新たに航空身体検査証明を申請する場合は、適合しない原因となった傷病の症状の検査等を受けるべきこと等を指示されることがあります。また、病態又は身体的異常が完治、欠損治癒又は固定し、航空業務に支障を来すおそれがない場合(ケースクローズ指示)は、指定医が適合すると判定できます。さらに、所見が安定している場合は別途通知する検査の結果新たな変化が認められなければ(特別判定指示)、指定医が適合すると判定できます。

3.航空業務と医薬品の使用

「航空機乗組員の使用する医薬品の取扱いに関する指針」(航空局安全部運航課長通達)が平成26年10月3日付けで改正され、医薬品の取扱いについて、大幅な見直しが行われました。この改正を受けて、同通達をわかり易く解説した「医薬品ハンドブック」を当研究センターが発行し、これがみなさんの薬の適正使用や健康管理のお役に立つことを願っています。