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喫煙に関して

たばこの有害物質として以下の3項目(たばこの3害)があります。

  1. タール:発ガン性
  2. ニコチン:心血管系に影響
  3. 一酸化炭素:
    肺の中で酸素と結合して、酸素を各組織に運搬するヘモグロビンの一酸化炭素(CO)に対する親和性は、酸素の200-250倍(COHb)であるため、酸素が結合できなくなり体内での酸素不足を生じます。
    航空医学的には、喫煙による一酸化炭素の発生が上空で身体に影響を及ぼす因子として加わります。下に示す表のとおり、ヘモグロビン(Hb)に結合したCO(COHb)は、喫煙者は非喫煙者より高い値を示します。

    COHb含有率
    一般健常人(非喫煙者)
    1-3 %
    喫煙者
    4-10 %

    ここで高度との関係を考えてみます。 高度5,000 ftにいるとしても、COHb濃含有率が増えれば生理的高度は変化し、生体への影響が増大します。

    COHb 0 %
    5,000 ft
    5 %
    10,000 ft
    10 %
    12,000 ft
    McFarland 1953

現在は機内では禁煙ですので、操縦中の喫煙による影響はないわけですが、COHbの半減期は5−6時間とされており、地上での喫煙の影響を考慮しておく必要があります。潜水士が発症した減圧症において、その症状は多量喫煙をする人でより重篤であったといった報告があります。FAA(米国)では、すでに1976年に、フライト8時間前からの喫煙禁止を勧告していました。

火をつけて葉を燃やす従来のたばこに加え、近年、非燃焼式・加熱式たばこ(通称電子たばこ)が流通しています。煙が出ない、タールが少ない、ニコチンが少ない、といった事実から安全である、といった宣伝がなされていたりします。燃やさないことから、上述のCOの発生が著しく低いことは間違いないのですが、目に見えないだけで有害物質を含んだ蒸気は発生していますし、タールやニコチン以外にも有害物質は種々含まれており、従来のたばこより含有量の多い有害物質さえあります。長期的なデータがないことも、安全とは言えない根拠のひとつです。日本呼吸器学会並びに日本禁煙学会がその危険性について警告を発しており、非燃焼式・加熱式たばこの使用は、従来の燃焼式たばこと同様、避けるべきと考えられます。

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