10. 視機能
10-1 遠見視力
- 身体検査基準
- [第1種]
- 次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。
- イ
- 各眼が裸眼で0.7以上及び両眼で1.0以上の遠見視力を有すること。
- ロ
- 各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上、かつ、両眼で1.0以上に矯正することができること。
- [第2種]
- 次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。
- イ
- 各眼が裸眼で0.7以上の遠見視力を有すること。
- ロ
- 各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上に矯正することができること。
- 不適合状態
- 2−1
- 上記基準を満たさないもの
- 2−2
- オルソケラトロジーによる矯正
- 2−3
- 屈折矯正手術の既往歴のあるもの
-
検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 視力表輝度は、80〜300cd/uとすること。
- 3−2
- 室内照度は、50ルックス以上とすること。ただし、回転式単独視標等で光源を用いる検査機器を使用する場合は、室内照度が視力表輝度を上回らないようにすること。
- 3−3
- 測定距離は、5メートルとすること。
- 3−4
- 視標はランドルト環を用いること。回転式で単独視標のものがよい。
- 3−5
- 視力判定基準は、5個以上の指標に対してその正答率が60%以上であることとする。
- 3−6
- 常用眼鏡としてコンタクトレンズを使用してもよいが、コンタクトレンズを使用する者に対しては、コンタクトレンズを使用した状態で遠見視力基準に適合することを確認すること。なお、初めてコンタクトレンズを使用する場合は、1ヶ月以上の順応期間をおくこと。
- 3−7
- 常用眼鏡のレンズの屈折度は、等価球面度数により算出すること。コンタクトレンズを使用する者については、予備眼鏡で屈折度を算出してもよい。
- 評価上の注意
オルソケラトロジー又は屈折矯正手術の既往歴のある者については、9.眼9−1外眼部及び眼球附属器を参照のこと。
- 備考
常用眼鏡を必要とする場合、常用眼鏡を使用した状態で中距離視力基準及び近見視力基準に適合するものでなくてはならない。コンタクトレンズを使用する場合も、同様とする。ただし、多重焦点型のコンタクトレンズを使用してはならない。また、色つきのコンタクトレンズを使用してはならない。
10-2 中距離視力
- 身体検査基準
[第1種]
裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が80cmの視距離で、近見視力表(30cm視力用)により0.2以上の視標を判読できること。
- 不適合状態
- 検査方法及び検査上の注意
[第1種]
- 3−1
- 検査条件は遠見視力の場合に準じる。
- 3−2
- 視力判定基準は、5個以上の視標に対してその正答率が60%以上であることとする。
- 評価上の注意
- 備考
- 5−1
- 常用眼鏡を使用しない者で、中距離視力基準について矯正眼鏡を必要とする者については、矯正眼鏡及びその予備眼鏡を携帯することを航空身体検査証明書に付す条件とすること。
- 5−2
- 矯正眼鏡を必要とする場合、矯正眼鏡を使用した状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。なお、矯正眼鏡はルックオーバー型、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ又は累進屈折力レンズ等とする。跳ね上げ式眼鏡も使用してよいが、矯正眼鏡を跳ね上げた状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。
10-3 近見視力
- 身体検査基準
裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が30cmから50cmまでの間の任意の視距離で近見視力表(30cm視力用)の0.5以上の視標を判読できること。
- 不適合状態
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 検査条件は遠見視力の場合に準じる。
- 3−2
- 視力判定基準は、5個以上の視標に対してその正答率が60%以上であることとする。
- 評価上の注意
- 備考
- 5−1
- 常用眼鏡を使用しない者で、近見視力基準について矯正眼鏡を必要とする者については、矯正眼鏡及びその予備眼鏡を携帯することを航空身体検査証明書に付す条件とすること。
- 5−2
- 矯正眼鏡を必要とする場合、矯正眼鏡を使用した状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。なお、矯正眼鏡はルックオーバー型、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ又は累進屈折力レンズ等とする。跳ね上げ式眼鏡も使用してよいが、矯正眼鏡を跳ね上げた状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。
10-4 両眼視機能
- 身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある両眼視機能の異常がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 斜視
[第1種]
- 2−2
- 不同視を呈するもの
- 2−3
- 輻湊・開散運動に異常が認められるもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 眼位検査は交代遮蔽検査法によること。なお、マドックス杆検査法又はこれに準じる検査法を用いてもよい。
第2種については、初回の航空身体検査時に行うこと。
[第1種]
- 3−2
- 左右眼の屈折度に2ジオプトリー以上の差異があるものを、不同視とすること。
- 3−3
- 輻湊検査は視標が2つに見える点又は両眼視線の開散する点を取ってもよい。簡便な方法として、ペンライト等を被検者の鼻根部に接近させ、それが2つに見える点、又は開散する点をもって輻湊近点とする。その点と外眼角との距離を計測し100mm以下を正常とする。
- 評価上の注意
- 4−1
- 上記2.の不適合状態の疑いがある場合は、眼科医の診断により確認すること。
- 4−2
- 不同視を呈するものについて、深視力が正常である場合は、適合とする。深視力検査の正常範囲は、次のとおりとする。
二杆法の場合は、5回平均値が30mm以内のもの
三杆法の場合は、5回平均値が20mm以内のもの
- 4−3
- 斜視のある者がプリズム眼鏡により矯正されている場合、プリズム眼鏡を使用した状態で、遠見視力、中距離視力、近見視力、両眼視機能及び眼球運動検査について基準に適合することが確認されれば、適合とする。
- 備考
[第1種]
上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、視力、屈折度、眼位、輻湊近点、両眼視機能検査(プリズムテスト、大型弱視鏡、深視力、フライテスト等)の成績を付して申請すること。
10-5 視野
- 身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある視野の異常がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 動的量的視野検査最大イソプタ(V/4)において、正常視野から半径方向に15°以上の狭窄を認めるもの
- 2−2
- 動的量的視野検査T/4において、暗点を示すもの
- 2−3
- 静的量的視野検査において、感度低下を示すもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 検査は、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)又は周辺視野を確認することができる静的量的視野計により行うこと。
- 3−2
- 動的量的視野計(ゴールドマン視野計)により検査する場合は、V/4及びI/4のイソプタについて、少なくとも15°毎に測定を行うこと。
- 3−3
- 動的量的視野計(ゴールドマン視野計)による検査において、正常視野は、最大イソプタが次に示す範囲以上とする。
上方60°、外上方75°、外方95°、外下方80°、下方70°、
内下方60°、内方60°及び内上方60°
- 評価上の注意
- 4−1
- 動的量的視野計(ゴールドマン視野計)で視野異常が疑われる場合には、眼科医の診断を受けること。
- 4−2
- 静的量的視野計で感度低下所見が疑われた場合、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)で測定し、眼科医の診断により異常が認められなければ、適合としてよい。
- 備考
- 5−1
- 上記2.の不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)による視野検査(少なくとも5本のイソプタで測定すること。)結果、過去2年分の視野検査結果、眼圧、眼底所見、自覚症状、臨床所見等を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
10-6 眼球運動
- 身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある眼球運動の異常がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 複視
- 2−2
- 病的眼振
- 2−3
- その他眼球運動に異常のあるもの。
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 眼球運動検査は、視診により8方向(内、外、上、下、斜上内、斜上外、斜下内、斜下外)について行うこと。
- 3−2
- 上記検査法で異常が認められた場合は、下記の検査のいずれかを実施すること。
(1)複像検査
(2)注視野検査
- 評価上の注意
- 4−1
- 3−2の結果複視が認められず、かつ、視認可能範囲について、各方向(8方向)が45°以上ある場合は、適合とする。
- 4−2
- 眼振が疑われる場合は、11.耳鼻咽喉11−2平衡機能を参照すること。
- 備考
- 5−1
- 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、視機能検査結果及び複像検査等の成績(ヘスチャート等)を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
10-7 色覚
- 身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある色覚の異常がないこと。
- 不適合状態
石原色覚検査表で正常範囲と認められないもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 色覚検査は、石原色覚検査表(学校用色覚異常検査表を除く。)を用い、原則として初回の航空身体検査時に行うこと。
- 3−2
- 色覚検査表は、変色又は褪色していないものを用いること。
- 3−3
- 検査時の照明は、自然光又はそれに準じた人工光線を用いること。
- 3−4
- 後天色覚異常の有無に注意すること。
- 評価上の注意
上記2.不適合状態の者が、パネルD−15検査結果においてパス判定の場合は、適合とする。この場合において、眼科専門医の診断により確認を行うこと。
- 備考
- 5−1
- 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、パネルD−15検査結果を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、航空業務に支障を来すおそれがなく、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。