4. 消化器系(口腔及び歯牙を除く。)
4-1 消化器疾患
- 身体検査基準
消化器及び腹膜に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は機能障害がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 腹膜疾患又はその疑いがあるもの
- 2−2
- 急性肝炎
- 2−3
- 慢性肝炎で症状のあるもの又は治療を要するもの
- 2−4
- 肝硬変
- 2−5
- 急性膵炎及び急性膵炎後で仮性膵のう胞を伴うもの
- 2−6
- 慢性膵炎のうち症状のあるもの又は治療を要するもの
- 2−7
- 消化管良性疾患(食道・胃静脈瘤、瘢痕化していない胃・十二指腸潰瘍、寛解期以外の炎症性腸疾患等)
- 2−8
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 上記2の疾患が疑われる場合には、血液検査、画像検査等により精査すること。
- 3−2
- 慢性肝炎、肝硬変については、静脈瘤や出血傾向等に注意し、急性機能喪失の危険性を考慮すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- 胃・十二指腸潰瘍について、内視鏡検査により瘢痕期(S-stage)が確認された場合は、適合とする。予防的にプロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーを投与する場合は、内視鏡による瘢痕期(S-stage)確認後、使用医薬品による副作用がないことが確認された場合には、適合とする。
治癒期(H-stage)においては、プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーで治療を開始し、異常を自覚しないこと及び使用医薬品の副作用がないことが確認された場合には、適合とする。
制酸薬(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーを除く。)、防御因子増強薬の使用は、病態が航空業務に影響を与えない範囲であり、かつ、使用医薬品の副作用が認められないことが確認された場合には、適合とする。なお、抗コリン剤の使用は不適合である。
ピロリ菌除菌のためのプロトンポンプ阻害薬と抗生物質の内服は、1週間以内で使用する場合に限り適合とするが、副作用確認のため、使用開始から3日間は航空業務に従事してはならない。
- 4−2
- クローン病又は潰瘍性大腸炎については、医薬品使用がなく臨床的に寛解しており、航空業務に支障を来すおそれがないと認められる場合は、適合とする。
- 4−3
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
- 4−4
- 肝硬変について、無症状で静脈瘤等の合併がなく治療を要さない場合で、Child-Pugh分類Aであれば適合とする。
- 4−5
- 生体肝移植の提供者については、術後少なくとも1ヶ月を経て、肝機能が正常化し、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症がないものは、適合とする。
- 4−6
- 逆流性食道炎の診断後、予防的にプロトンポンプ阻害薬又はH2ブロッカーを投与する場合は、病態が航空業務に影響を与えない範囲であり、かつ、使用医薬品の副作用が認められないことが確認された場合には、適合とする。
- 4−7
- プロトンポンプ阻害薬を使用している場合は、詳細な問診により内服内容や状況を確認すること。
- 備考
- 5−1
- 慢性膵炎の治療中で病態が安定している者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、血液検査、画像検査等の検査結果、臨床経過等を付して申請すること。
- 5−2
- 食道・胃静脈瘤で病態が安定しており、出血の危険性が極めて低いと考えられる者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患についての臨床経過等の記載に加え、内視鏡所見及び経過等を付して申請すること。
- 5−3
- クローン病又は潰瘍性大腸炎の治療中で、病状が安定している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、症状や内視鏡所見を含めた原疾患の活動性の評価等を付して申請すること。
- 5−4
- 慢性肝炎・肝硬変の治療中で、病態が安定している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、画像所見、肝予備能、凝固系、血算等の血液検査結果等を付して申請すること。
- 5−5
- 上記5−1から5−4の者のうち、十分な経過観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
- 5−6
- 肝移植を受け、術後十分な観察期間を経て経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患についての記載、術後の治療内容及び拒絶反応を含む臨床経過、手術記録、現在の血液検査及び画像検査の結果並びにパフォーマンス・ステータス等を付して申請すること。
4-2 消化器外科疾患
- 身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある消化器外科疾患又は手術による後遺症がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 胆石症
- 2−2
- 腹部の内・外ヘルニアでヘルニア内容の嵌頓又は絞扼のおこる可能性のあるもの
- 2−3
- 肛門部疾患により、貧血を来す出血、鎮痛を要する疼痛又は炎症を伴うもの
- 2−4
- 外科手術後、次に該当するもの
(1)手術後観察期間の不十分なもの
(イ)虫垂切除後又は胆嚢摘出後(腹腔鏡下摘出術を含む)1ヶ月以内のもの
(ロ)腹部、腰部、骨盤部又は外ヘルニア手術後1ヶ月以内のもの
(ハ)消化管切除後3ヶ月以内のもの(ただし、腹腔鏡下消化管切除術の場合は、1ヶ月)
(2)人工肛門(ストーマ)、尿管皮膚瘻・回腸導管(ウロストーマ)の造設してあるもの
(3)航空業務に支障を来すおそれのある手術による後遺症が認められるもの(術後イレウス、ダンピング症候群等)
- 検査方法及び検査上の注意
必要に応じて血液検査及び画像検査等により術後の回復状態を確認すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- 胆石症について、無症候性で治療を要さない者又は術後少なくとも1ヶ月を経て経過良好であり、手術による後遺症のない者については、適合とする。
- 4−2
- 開腹手術後は、腹壁運動機能の回復を確認し、後遺症及び運動・食事制限等について十分に検討を行うこと。
- 4−3
- ヘルニアで、用手還納できる場合又は装具(ヘルニアバンド等)使用により逸脱を防ぐことができる場合は、ヘルニアの部位を確認し、体位の変化によっても嵌頓又は絞扼のおそれがないことが確認されれば適合とする。
- 4−4
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
- 備考
- 5−1
- 胆石症の治療中で経過良好な者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、画像検査、血液検査等を付して申請すること。
- 5−2
- ストーマ又はウロストーマを造設した者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、種類、位置及び使用パウチ等の状況についての報告を付して申請すること。
- 5−3
- 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。