11. 耳鼻咽喉
11-1 内耳、中耳及び外耳
- 身体検査基準
内耳、中耳(乳様突起を含む。)又は外耳に航空業務に支障を来すおそれのある疾患がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 内耳、中耳及び外耳
(1)真珠腫性中耳炎
(2)メニエール病
(3)突発性難聴
(4)外リンパ瘻(内耳窓破裂)
(5)良性発作性頭位めまい症
(6)腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
(7)航空業務に支障を来すおそれのある炎症性疾患
- 2−2
- その他
(1)聴神経腫瘍及びその他の小脳橋角部腫瘍
(2)前庭神経炎
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 内耳及び中耳の疾患については、眩暈を生じる場合があるので既往歴等について慎重に確認すること。
- 3−2
- 必要に応じて耳鼻咽喉科医の診断により確認すること。
- 3−3
- メニエール病、良性発作性頭位めまい症及び前庭神経炎については、11.耳鼻咽喉11−2平衡機能障害も参照のこと。
- 評価上の注意
- 4−1
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがある者については、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
- 4−2
- 突発性難聴については、平衡機能に異常がなく聴力基準を満たす時は、適合とする。
- 4−3
- 良性発作性頭位めまい症については、単回の発作で自覚症状が消失し、眼振検査、平衡機能検査で異常を認めないことが確認されれば、適合とする。
[第1種]
- 4−4
- 上記2−1の疾患が臨床的に治癒している場合であっても、あぶみ骨手術の既往があるときは不適合とする。
ただし、その手術法が小開窓あぶみ骨切除手術(smallfenestrastapedectomy)であり、手術後6ヶ月以上を経過し平衡機能に異常がなく聴力基準を満たすときは、適合とする。
- 備考
- 5−1
- 上記2.不適合状態の者で、経過良好である者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、聴力検査、平衡機能検査の結果等を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
11-2 平衡機能
- 身体検査基準
平衡機能障害がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- めまい症及びその既往歴のあるもの
- 2−2
- 内耳及び中枢に起因する平衡機能障害及びその既往歴のあるもの
- 2−3
- 動揺病
- 2−4
- 病的眼振
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 眼振検査は、視診により正中と4方向(右、左、上、下)について行うこと。
- 3−2
- 自発眼振及び頭位眼振検査
3−1の視診において眼振が疑われた場合に行う。
[実施方法]自発・注視眼振検査及びフレンツェル眼鏡下で頭位眼振検査を行う。
[判定基準]眼振が認められる場合は、不適合とする。
- 3−3
- 平衡機能障害が疑われる場合には、付録1−2に掲げる検査のうちから必要に応じて行い、評価すること。
- 3−4
- 動揺病は、平衡機能障害のあるもの及び心理的影響によっても生ずる「空酔い」の重大なものを指しており、注意深く問診すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- 不適合状態が疑われる場合には、耳鼻咽喉科医による精査を実施すること。
- 4−2
- めまい症の既往歴のあるもの又は内耳及び中枢に起因する平衡機能障害の既往歴のあるもののうち、単回の発作で基礎疾患がなく、症状が消失して眼振検査及び平衡機能検査で異常を認めないことが確認されれば、適合とする。
- 備考
- 5−1
- 上記2.不適合状態の者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、眼振検査(フレンツェル眼鏡使用又は赤外線CCDカメラ下)、偏寄検査(付録1−2のいずれか)、電気眼振計による検査(ENG)結果等を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
11-3 鼓膜
- 身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある鼓膜の異常がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 耳漏、鼓膜発赤、耳痛等の活動性病変のあるもの
- 2−2
- 瘻孔症状のあるもの、すなわち圧変化によりめまいが起きるおそれのあるもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 鼓膜所見は、耳鏡により確認すること。
- 3−2
- 瘻孔症状は、外耳道を指で閉鎖し、圧をかけたときのめまい感や眼振の有無により確認すること。必要に応じて耳鼻咽喉科医の診断により確認すること。
- 評価上の注意
鼓膜に穿孔が認められた場合又は中耳換気チューブを留置している場合であって、基準値を超える聴力低下がなく、かつ、2.に記載された症状がないときは適合とする。
- 備考
11-4 耳管
- 身体検査基準
耳管機能障害がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 耳管狭窄症
- 2−2
- 耳管開放症
- 検査方法及び検査上の注意
圧変化による耳痛及び耳閉感、自声音響、呼吸音の自覚等の耳管機能障害が疑われる症状がある場合は、耳鼻咽喉科医の診断により確認すること。
- 評価上の注意
- 備考
- 5−1
- 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、ティンパノメトリー等の検査結果を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
11-5 鼻腔、副鼻腔及び咽喉頭
- 身体検査基準
鼻腔、副鼻腔又は咽喉頭に航空業務に支障を来すおそれのある疾患がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 鼻腔、副鼻腔
(1)高度な鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎
(2)進行性鼻壊疽
(3)腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
(4)航空業務に支障を来すおそれのある炎症性疾患
- 2−2
- 咽喉頭
(1)軟口蓋麻痺
(2)咽頭外傷で後遺症のあるもの
(3)喉頭狭窄
(4)声帯麻痺
(5)腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
- 検査方法及び検査上の注意
鼻腔及び副鼻腔所見にて疾患の有無が疑わしい場合は、画像検査等を実施して診断を確認すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- アレルギー性鼻炎については、1.一般1−7アレルギー疾患を参照のこと。
- 4−2
- 上記2−2(1)から(4)について、重度の言語障害又は構音障害がなく、音声コミュニケーションが可能であり、航空業務に支障を来すおそれのないものは、適合とする。
- 4−3
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと
- 4−4
- 必要に応じて、1.一般1−6リウマチ疾患、膠原病又は免疫不全症、5.血液及び造血器系を参照のこと。
- 備考
11-6 鼻中隔
- 身体検査基準
鼻腔の通気を著しく妨げる鼻中隔の彎曲がないこと。
- 不適合状態
高度の鼻中隔彎曲
- 検査方法及び検査上の注意
- 評価上の注意
鼻鏡所見で鼻腔通気を著しく妨げる鼻腔形態異常が認められるものは、不適合とする。
- 備考
11-7 吃、発声障害及び言語障害
- 身体検査基準
吃、発声障害又は言語障害がないこと。
- 不適合状態
吃、発声障害又は言語障害
- 検査方法及び検査上の注意
- 評価上の注意
発声障害又は構音障害により音声に異常を来し、音声によるコミュニケーションの困難な場合は不適合とする。
- 備考
付録1-2 平衡機能検査
- 歩行検査
- [実施方法]
- 閉眼して6mの距離を前進させ、真すぐに歩行した場合に到着すべき点と、実際に到着した点との左右への偏りを測定する。
- [判定基準]
- 前進で1m以上左右への偏倚がある場合は、不適合とする。
- 足踏検査
- [実施方法]
- 半径0.5m及び1mの2個の同心円の中心に両足を揃え起立させ、遮眼のうえ両上肢を前方に伸ばし、50歩の足踏みをさせる。
足踏み中の動揺の有無、終了時の回転角度及び移行距離を測定する。
- [判定基準]
- 90゜以上の回転角度、1m以上の移行距離又は著しい動揺が認められる場合は、不適合とする。
- 起立検査
- (1)両脚直立検査
- [実施方法]
- 開眼及び閉眼で被検者の両足先を合わせた状態で直立させ、30秒間身体の平衡状態を観察する。
- [判定基準]
- 開眼時及び閉眼時ともに身体の動揺の少ないこと。
- (2)単脚直立検査
- [実施方法]
- 開眼及び閉眼で、片脚の「もも」を前方にほぼ水平位まであげ、単脚で直立させる。30秒間の身体の平衡状態を左右の下肢について観察する。
- [判定基準]
- 開眼時に動揺や接床を示す場合又は閉眼時中等度以上の動揺若しくは30秒間に3回以上の接床を示す場合は、不適合とする。
- (3)マンテスト(MannTest)
- [実施方法]
- 両脚を前後に(矢状面上に)一直線上におき、1側の脚の足先を他側の脚の踵に接して起立させ、両脚を伸ばし、正頭位で正面視させる。この姿勢でまず開眼で検査し、次いで遮眼して30秒間観察する。なお、前後の足を交替して同様の観察を行う。
- [判定基準]
- 開眼時及び閉眼時ともに著明な動揺又は転倒のないこと。
- 遮眼書字検査
- [実施方法]
- 頭、躯を正面に向け、正しい姿勢で椅子にかけさせ(躯のいかなる部分もよりかかったり、触れさせてはならない。)、鉛筆を持たせ、まず、開眼のまま文字(自分の氏名がよい。)を3cmないし5cm平方の大きさで縦書きさせる。次に、遮眼し、開眼時と同じ文字を書かせる。
- [判定基準]
- 左右10゜以上の偏書が毎回認められる場合又は各文字に著しい不均整が認められる場合は不適合とする。