6. 腎臓、泌尿器系及び生殖器系
6-1 腎疾患
- 身体検査基準
腎臓に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は後遺症がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 急性腎炎又はネフローゼ症候群
- 2−2
- 腎結石
- 2−3
- 多発性嚢胞腎
- 2−4
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
- 2−5
- 手術後1ヶ月以内のもの
- 2−6
- 血液透析、腹膜透析その他の維持血液浄化療法を受けているもの
- 2−7
- 腎移植を受けているもの
- 2−8
- 腎機能障害を呈するもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 必要に応じて尿沈査、血液生化学検査、画像検査等を用いて確認すること。
- 3−2
- 必要に応じて腎機能について確認すること。
- 3−3
- 腎機能障害とは、血清クレアチニン値が2.0mg/dlを超えるものをいう。
- 評価上の注意
- 4−1
- 腎結石については、治療の有無にかかわらず結石が完全に排除されたことが確認された場合、疝痛発作若しくは肉眼的血尿の既往歴ががない無症候性結石の場合又
は発作の可能性が低いと判断される場合は、適合とする。なお、腎結石の発作の可能性の判定については、泌尿器専門医又は腎臓専門医の診断により確認すること。
- 4−2
- 多発性嚢胞腎については、他の臓器についても慎重に検討し、自覚症状(腹痛、腰痛、肉眼的血尿等)、感染、腎機能障害及び他臓器の重大な合併症(脳動脈瘤等)がない場合は、適合とする。
- 4−3
- 一側腎(先天性又は後天性)については、感染又は高血圧等がなく腎機能障害のない場合は、適合とする。
- 4−4
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照すること。
- 備考
- 5−1
- ネフローゼ症候群の治療中又は治療歴を有する者であって、当該疾患が安定している者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患及び治療内容の詳細を含む臨床経過、検査結果等を付して申請すること。
- 5−2
- 腎結石について、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、尿検査(沈査を含む。)、画像所見、基礎疾患の有無についての報告を含む臨床経過等を付して申請すること。
- 5−3
- 多発性嚢胞腎について、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、頭部の画像検査(脳動脈瘤等の評価)、心臓超音波検査、腹部の画像検査(肝のう胞、膵のう胞及び大腸憩室の評価)及び各種腎機能検査の結果等を付して申請すること。
- 5−4
- 上記5−1から5−3の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で合格とすることを許可される。
- 5−5
- 腎移植を受け、術後十分な観察期間を経て経過良好で腎機能が安定した(血清クレアチニン濃度2.0r/dl以下)と認められる者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患についての記載、術後の治療内容及び拒絶反応を含む臨床経過、手術記録、現在の血液検査の結果及び画像検査の結果並びにパフォーマンス・ステータス等を付して申請すること。
6-2 泌尿器系疾患
- 身体検査基準
泌尿器に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は後遺症がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 尿管の狭窄又は圧迫
- 2−2
- 尿路結石
- 2−3
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
- 2−4
- 泌尿器系の手術後1ヶ月以内のもの(経尿道的電気切除−TURを含む。)
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 必要に応じて、画像検査等により検討するとともに、泌尿器科医の診断により確認すること。
- 3−2
- 尿路結石については、十分に問診すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- 尿路結石について、治療の有無にかかわらず結石が完全に排除されたことが確認された場合又は発作の可能性が低いと判断される場合は、適合とする。なお、尿路結石の発作の可能性の判定については、泌尿器専門医又は腎臓専門医の診断により確認すること。
- 4−2
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
- 備考
- 5−1
- 尿路結石について、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、尿検査(沈査を含む。)、画像所見、基礎疾患の有無及び治療内容を含む臨床経過等を付して申請すること。
- 5−2
- 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
6-3 生殖器系疾患
- 身体検査基準
生殖器に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は後遺症がないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 治療を必要とする炎症 2−2腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
- 2−2
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
- 2−3
- 治療を必要とする前立腺肥大症
- 2−4
- 生殖器官の手術後1ヶ月以内のもの(経尿道的電気的切除術−TURを含む。)
- 2−5
- 精神症状若しくは著しい疼痛等を伴う月経障害又は子宮内膜症
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 必要に応じて画像検査等により検討を行うとともに、産婦人科医又は泌尿器科医の診断により確認すること。
- 3−2
- 月経障害の有無については、問診により確認すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- 卵巣腫瘤は捻転をおこすことがあるため、婦人科医の診断により確認すること。
- 4−2
- 子宮筋腫について、貧血を来すような出血等がない場合は、適合とする。
- 4−3
- 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
- 4−4
- 子宮内膜症等で経口避妊薬(低用量ピル)を投薬する場合は、投薬開始後最低1ヶ月間の経過観察期間をおき、その間に血栓傾向、肝障害、血圧異常等の副作用の定期的なチェックを実施し、異常がないことを確認すれば適合とする。
- 備考
6-4 妊娠
- 身体検査基準
妊娠により航空業務に支障を来すおそれがないこと。
- 不適合状態
- 2−1
- 正常妊娠でないもの
- 2−2
- 妊娠の第12週まで及び妊娠第27週以降
- 2−3
- 航空業務に支障を来す妊娠に伴う合併症(悪阻及び妊娠高血圧症候群等)又は流産若しくは早産の徴候のあるもの
- 検査方法及び検査上の注意
- 3−1
- 妊娠の有無については、問診により確認すること。
- 3−2
- 妊娠中は、産婦人科医の診断(診察及び超音波検査法等)により母体と胎児の状態について確認すること。
- 評価上の注意
- 4−1
- 妊娠については、母子の健康及び航空の安全の観点から慎重に対応するとともに、航空業務による母子への影響について十分に説明すること。
- 4−2
- 出産又は流産後の場合には、母体の回復状況について産婦人科医の診断を受け、航空業務に支障のないことを確認すること。
- 4−3
- 流産の経歴がある場合は、慎重に判断すること。
- 4−4
- 妊娠中は心理的に不安定となり、子宮拡大により安全ベルトの装着が困難となる等運動制限も生じるため、慎重に判断すること。
- 備考